道路橋定期点検要領の改定(なんでもインフォ)
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はじめに
我が国のインフラは、高度経済成長期以降に整備されたものが多く、今後、建設から50年以上経過する施設の割合は加速的に増加するため、その維持管理・更新が課題となっています。
2012年12月2日の笹子トンネル天井板崩落事故(原因:天井板を支えるボルトの強度不足)を受けて、2014年6月25日に道路橋定期点検要領が通知されました。これにより、橋長2.0m以上の道路橋では5年に1回の定期点検が義務付けられ、近接目視による点検が基本とされています。現在、1巡目(2014~2018)、2巡目(2019~2023)の定期点検が終了しました。令和6年度(2024)からの3巡目の定期点検に併せて、第20回社会資本整備審議会 道路分科会 道路技術小委員会(2024年1月19日)から示された道路橋定期点検要領の改定案を踏まえる形で2024年3月27日に道路橋定期点検要領が改定されたので、その内容を紹介します。
点検要領の見直しについて
定期点検要領の見直しに当たり、これまで実施された点検の課題として次の2点が挙げられています。
①点検の質
②点検の負担
まず、一つ目の点検の質については各県ごとに診断結果にばらつきが見られること。次回点検までに補修が必要となる判定区分Ⅲの診断結果の根拠が不明のため、補修が最適かどうか不明であることが問題とされています。
二つ目の点検の負担については、過年度点検の記録データの活用が不十分であること、点検及び診断する技術者が不足していること、業務プロセスを改善し作業の効率化を図るために、新技術(点検支援技術)が十分に活用されていないこと等が問題として挙げられています。
点検要領の改定について
先に示した課題を踏まえた改定の概要(主要部分)は、次の通りです。
①点検の質の確保
現状の点検調書(国交省様式)では健全性の判定区分(Ⅰ~Ⅳ)のみが記録されています。
性能の推定の追加
・構造物の現状がどのような状態にあるのか
例:構造物に大きな影響を及ぼす可能性のある状況。地震、洪水、活荷重等による規模が大きい作用が生じる状況等。
・次回点検までに想定される損傷状況に対して、構造物がどのような状態になる可能性があるか
上記について推定を記録する。
②点検の合理化
点検支援技術の活用
支援技術を活用した時の診断の品質が課題となるため、橋梁の材料、部材毎に安全性や耐久性を推定するために必要となる資料を作成する。出典:国土交通省 第20回社会資本整備審議会 配布資料(一部抜粋)なお、「点検支援技術性能カタログ(案)」が215技術に拡充されました(令和5年3月)。性能カタログには新技術導入に必要な技術ごとの性能が記載されています。出典:国土交通省道路局 国道・技術課記者発表資料(R5.3.31)
おわりに
改定された点検要領では点検調書(国交省様式)の記載方法が大きく変更となっています。3巡目の点検では、現状及び次回点検までに想定される状況に対しての「性能の推定(見立て)」を記録する。
「健全性の診断の区分」の決定が妥当であるかについて技術的見解などの根拠を記載することが重要となります。