河川と流域の連携(なんでもインフォ)
なんでもインフォ2024年11月号 (PDF原稿が開きます)
● はじめに
近年の頻発する豪雨災害に対する取り組みは、令和2年から、あらゆる関係者が一体となって取り組む「流域治水」へ転換されました。そして、この機運の高まりを流域の環境保全・整備にも展開しようという動きがあります。
本年9月20日に国土交通省から「河川・流域の連携による生態系ネットワーク形成のポイントブック(案)」が公表されました。わが国でも生態系ネットワーク形成の取り組みが各所で行われていますが、河川流域においてもこの取り組みを促進させようという動きがあります。今回は、「河川・流域の連携」をキーワードに、「生態系ネットワーク形成のポイント」に触れてみたいと思います。
● 河川と流域の連携
(図は省略)上の図は、河川と流域の連携のイメージです。
河川での取り組みを「(青)」で示し、流域での取り組みを「(緑)」で示しています。この2つを連携することで相乗的な取組み「(赤)」を実施しようとするものです。
● 河川での取り組みの一例
河道内の氾濫原では樹林化の影響によって湿地が減少し、氾濫原を利用する魚類や湿地性鳥類の生息数を減少させる一因になっています。これを解消するため、湿地が形成される適切な高さでの河道掘削が有効です。
● 流域での取り組みの一例
流域での取り組みの一例として「 雨水貯留・浸透機能 」
の保全や創出が挙げられます。休耕田を湿地として再生し、コウノトリの飛来地として活用されています。また、湿地は、洪水時のピーク流量の増加を抑制させる機能があり、治水の面でも有効です。
陸前高田市の川原川では、川沿いに公園を配置することで全体的に広い敷地が確保されました。このことによって、浅瀬など多様な水際を出現させ、水生生物の生息環境が創出されました。また、野外活動や子供たちの川遊びの場など「グリーンインフラを活用した都市空間」として親しまれています。
● おわりに
雨水貯留・浸透などの治水効果、そして生態系ネットワークの形成への貢献という観点から河川と流域の連携の重要性が増してきています。
そのような中でも、河川は流域の基軸となる自然空間であることを意識して、今後の洪水対策をはじめとする河川計画等に反映していきたいと思います。