なんでもインフォ(パワーアシストスーツ)

■ 【 なんでもインフォ2025.05 】 PDF原稿は左記リンクからご覧いただけます。
●はじめに
建設現場の機械化が困難な作業においては、多くの工程で人力による重量物の運搬が必要となりますが、高齢化が進む本業界では、作業効率の低下は想像に難くありません。そこで、解決策の一つとして着目されているのが物流、農業等の一般産業分野や、リハビリテーション、歩行補助等の医療・介護分野において研究開発が進められている「パワーアシストスーツ(PAS)」です。※以降、PASと表記。
今回のなんでもインフォでは、建設業での普及も期待されるPASについて紹介します。
●PASの概要
PASは、身体に装着し、装着者又は作業対象に対して作用することで、身体動作の支援、身体機能の改善・治療等を行うものをいいます。また、電動モーターなどで助力を得るアクティブスーツとゴム、バネなど素材の伸縮力や空気圧で助力を得るパッシブスーツの2つに分類されます。現状は、アクティブ、パッシブ共に持ち上げ時の腰部を補助するものの種類が多くなっています。
●PASの歴史
PASの研究は1960年代から主に産業用のパワーアシストシステムとして研究が進められてきました。最初のパワーアシストスーツのHardimanは全身運動を補助するタイプで、装着者により操縦され、油圧で駆動するアクティブタイプであり、両腕合わせて680kgの物体を持ち上げられる設計でした。非常に挑戦的な開発でしたが、筋力補助や動作支援などの身体機能拡張の困難さを明確にした事例となり、実用化には至りませんでした。
●市場動向
2025年における用途別の市場規模では製造業の割合が最も大きく、次いで運輸・保管業、建設業と従事者の多い業種で需要の増加が続いていくと予想されています。
●建設現場で効果が期待される施工工種
PASは多様な建設現場の人力作業のうち、重量物を扱い身体負担が大きい作業(掘削、持ち上げ下げ、据付、中腰維持継続作業等)や軽量物の扱いでも長時間の反復作業において適用可能性が高いと考えられており、下記の施工工種で効果が期待されます。
●おわりに
今回は、パワーアシストスーツ(PAS)について紹介しました。
i-Constructionや働き方改革が推し進められている現在の建設業界では、就業時間削減のための業務効率化は大きな課題となっています。業界全体の高齢化が進む中でそれらの課題に対するPASの活用に今後も注目していきたいと思います。