なんでもインフォ(ネイチャーポジティブについて)
PDF原稿はこちら なんでもインフォ2026.03・04 からご覧いただけます。
最近よく見聞きするワードに「ネイチャーポジティブ(Nature Positive)」があります。日本語では「自然再興」と訳され、「自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させること」と基本的に認識されており、生物多様性における重要な考えとなっています。なお、建設分野は世界の生物多様性の損失原因の最大30%を占めるとされています。そこで今回は、ネイチャーポジティブの始まりや国際的な目標などについて整理し、これから私たちが取るべき行動を考える参考にしたいと思います。
生物の多様性の保全を目的とした条約で、1992年にブラジルのリオデジャネイロで開催された国連環境開発会議(地球サミット)で採択されました。我が国は1993年5月にこの条約を締結しています。この時代にはネイチャーポジティブという言葉はありませんでしたが、ここが起点になっているようです。なお、この地球サミットでは「気候変動枠組条約」も採択されており、この2つの条約は双子の条約ともいわれています。
気候変動分野では、2015年のCOP21で採択されたパリ協定など大きな進展がみられました。この成功体験を受け、生物多様性分野でも明確なコンセプトが必要とされるようになっていました。そんな折、2021年2月に英国財務省が「生物多様性の経済学」を発表し、1992年をベースとして地球全体の生物多様性を前提とする「自然資本」が40%喪失しているという衝撃的な内容を明らかにしました。これを受ける形で、2021年6月のG7サミットで発表されたのが「ネイチャーポジティブ」です。このサミットでは、取り組むべき基本的な目標が「G7・2030年自然協約」という形で明記されています。
自然協約の主な内容としては、まずG7首脳が2030年までに生物多様性の損失を止めて反転させるという世界的な使命をコミットしています。また、ネット・ゼロを達成するのみならず、人々と地球双方にとって利益となるようなネイチャーポジティブを達成しなければならないとされています。さらに、2030年までに世界の陸地の少なくとも30%および世界の海洋の少なくとも30%を保全または保護するための新たな世界目標を支持することが盛り込まれており、この目標は「30by30(サーティ・バイ・サーティ)」と呼ばれています。
2022年12月に開催された「第15回生物多様性条約締約国会議(COP15)」において、生物多様性に関する新たな世界目標である「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択されています。この新枠組は、2050年ビジョン、2030年ミッション、2050年グローバルゴール、2030年グローバルターゲット、およびその他の関連要素から構成されています。2030年グローバルターゲットには、日本が特に重視している30by30や自然を活用した解決策などの要素に加え、進捗を明確にするために8個の数値目標が盛り込まれています。また、この枠組を踏まえて、我が国の新たな生物多様性の保全と持続可能な利用に関する基本的な計画として、「生物多様性国家戦略2023-2030」が2023年3月に閣議決定されています。
生物多様性条約事務局が2020年9月に取りまとめた「地球規模生物多様性概況第5版(GBO5)」の図に分かりやすい説明を追記したものが、環境省のホームページに掲載されていたので紹介します。
気候変動への対応とともに、生物多様性の保全・回復が、我々の地球環境の未来を左右するのではないかと考えています。本稿が、読者の皆様が生物多様性の保全・回復の重要性を考える機会になれば幸いです。


