なんでもインフォ(SABOカード)

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▶ なんでもインフォ2025.07
皆さんは「SABO(砂防)カード」というものをご存じでしょうか。見た目は集めて楽しいコレクションカードですが、その裏には、防災インフラの奥深い技術と自然との共生の物語が詰まっています。今回は、岩手県内で配布が始まったSABOカードを通して、地域と防災について考えてみたいと思います。
近年、ダムカードや橋カードといった“インフラカード”が、地域の観光資源や防災啓発ツールとして注目を集めています。公共インフラを身近に感じながら学ぶことができるユニークな取り組みとして、愛好家のみならず広く人気が高まっています。
その中でも、「SABOカード(砂防カード)」は、全国各地に設置されている砂防施設の役割や特徴を伝えるために、国土交通省や地方整備局が発行しているものです。表面には砂防施設の全体写真が掲載され、裏面には施設の型式や規模、施工時の工夫といった技術的な情報が記載されており、インフラ技術者から一般の方まで幅広く楽しめる内容となっています。
このたび、岩手県内で配布されているSABOカードを収集しました。
岩手県内では、2024年(令和6年)4月27日から「SABOカード」が新たに発行され、現地の砂防施設や周辺の道の駅、観光案内所で入手できるようになりました。
岩手河川国道事務所が作成したのは、「小水無沢第1砂防堰堤」「二双沢砂防堰堤」「シガクラ沢砂防堰堤」の3種類です。それぞれのカードには、施設の形状や設置目的、施工技術の特色などが丁寧に記載されており、現地の自然環境と一体化したインフラの姿を感じ取ることができます。
現地を訪れてカードを手にしたことで、単なる“コレクション”の枠を超え、砂防という社会基盤の大切さをあらためて認識するきっかけとなりました。
砂防施設は、山間の自然景観と調和しながら、土石流や流木災害などから人命や暮らしを守る重要な防災インフラです。
なかでも砂防堰堤は、渓流を流れる土砂や流木を捕捉し、流下エネルギーを低減させることで、下流域の被害を軽減する役割を担っています。
その規模や構造は、自然の地形と調和しつつも、力強さを備えており、「ダイナミックな砂防施設」と表現するにふさわしい姿です。
国土交通省では、このような砂防施設を防災教育や地域振興に活かす「ダイナミックSABOプロジェクト」1)を推進しています。これは、砂防施設そのものを見学の対象とし、景観・歴史・科学的意義などを体感できる学びの場として活用する取り組みです。各地で施設のライトアップ、見学会、スタンプラリーなども実施されており、観光・教育・防災が交差するユニークな試みとして注目されています。
SABOカードの収集も、現地(実際の施設や近隣の道の駅、観光案内所)を訪れることでカードを受け取れる仕組みになっています。カードを手に取ると、地域ごとの地形や防災技術の違い、自然との共生の工夫などが見えてきて、単なる「コレクション」の枠を超えた学びの旅となります。
SABOカード同様、ダムカードも施設の見学や地域散策の楽しみを広げてくれるツールです。写真でご紹介しているように、岩手県内でもダムカードは多くの施設で配布されており、SABOカードと合わせて“インフラめぐり”を楽しむことができます
今後も、こうした地域インフラへの理解を深める活動を大切にし、防災意識の向上と地域貢献につなげていきたいと考えています。皆さまもぜひ、身近な山や川に目を向けて、砂防施設の存在とその背景にある人々の防災の想いに触れてみてください。そして機会があれば、SABOカードを集めてみるのも、きっと新しい発見があるでしょう。